D2 – 2.サプライチェーンにおけるコスト

ワイン1本の販売価格は、サプライチェーンのすべての段階のコストをカバーする小売価格で販売されます。

ブドウ栽培・ワイン醸造とともに、サプライチェーンのすべての段階でどのようなオプションを選択するかが重要です。

特に、全体のコストのうち、ブドウ栽培にかかるコストは70%前後、ワイン醸造にかかるコストは15〜25%を占めるため、非常に重要だと言えます。

この比率は、多くのワインに共通して言えることです。

  • 安価なワイン、プレミアムワイン
  • 自社農園でのブドウ栽培、ブドウの買い付け

1. ブドウ栽培

ブドウ栽培にかけるコストは、大きくヴィンヤードの設立と運営に分けられます。

1. ヴィンヤードの設立

ヴィンヤードを設立するには、土地を購入しブドウ畑を整備する必要があります。

1. 土地の購入

最初にかかる費用は、ブドウ畑の土地の購入や賃貸に関するもので、土地の価格は複合的な要因で大きく異なります。

  • 高品質なブドウを栽培するための、土地の環境
  • アペラシオンの名称
    • Californiaでは、Napa Valleyの土地の価格は、Central Valleyの約10倍
    • Bordeauxでは、Médocの高級地区の土地の価格は、一般的なAOC Bordeauxの100倍以上に達することもある
  • 土地の希少性
    • Champagneの1等地は、滅多に市場に出回ることがなく、出回ったとしても非常に高額になる

2. ブドウ畑の準備

ブドウ畑の運営を開始するまでには、多くの準備が必要であり、費用も高額になります。

また、ブドウの木は植えてから、ワイン生産が可能なブドウを収穫するまでに少なくとも3年の期間を要するため、多額の資本が必要になります。

  1. 土地がブドウ栽培に適しているか、どのブドウ品種に適しているかを決めるために測量を行う(土壌サンプルの採取など)
  2. 土地の整地
  3. ブドウ畑を区画に分け、進入路を作る
  4. トレリスの設置
  5. (乾燥した地域では)灌漑システムの構築
  6. 気象災害からの保護(防風林、霜除けなど)
  7. 機械・設備などの購入と、それらを保管するためのガレージの建設

2. ヴィンヤードの運営

ブドウ畑を設立してからは、望ましい量と品質のブドウを栽培するための運営コストが必要になります。

  1. 労働力
    • 労働コストと機械購入のコストには、バランスがある。
      • (Chileのように)労働コストが低い場合は、資本集約的な設備投資を行うインセンティブは低くなる
      • (Coonawarraのように)労働コストが高い場合は、機械への投資が有利になる
  2. 物資
    • トレリスの修繕に必要な資材や、手袋・剪定挟などの消耗品
  3. ブドウ園での処理
    • 肥料や農薬(除草剤、殺菌剤、殺虫剤など)
      → 総合的な害虫管理を行うことで、使用料を減らすことができる
    • 灌漑が必要な場合は水を引く権利費、または水の購入費用
  4. 電気
    • 灌漑システム、霜除け装置など
  5. 保険と減価償却
    • 自然災害に備えた保険
    • ヴィンヤード設立、または追加した設備・機械の減価償却費用

2. ワイン醸造

ブドウ畑と同様に、ワイン醸造もワイナリー設立のための資本コストと、運営コストが必要になります。

1. ワイナリーの設立

  1. ワイナリーを建設する土地代
  2. ワイナリーの建設費用
  3. 醸造のための設備・機械・製造ライン(プレス機、タンク、パイプ、ポンプ、冷蔵設備、熟成容器、ボトリングラインなど)

2. 醸造コスト

  1. (ヴィンヤードを保有していない場合)ブドウの購入費用
  2. 労働力
    • (ブドウ畑と異なり)少数の熟練したスタッフをフルタイムで雇用することが多い
    • 収穫期の荷降ろしや機器の移動のために、臨時労働者を雇うこともある
  3. 物資(ワイナリー資材)
  4. 機械・設備のランニングコスト
    • 燃料、電気代、メンテナンス費用など
    • 洗浄に大量の水を使用(水が高価なエリアでは、水処理施設への投資を行うワイナリーもある)
  5. 電気
    • 冷蔵・換気に大きな費用がかかる他、プレス機・ポンプ・照明などの電気代が必要(ソーラーパネルなどを設置し、コスト削減を行うワイナリーもある)
  6. 熟成
    • ワイナリーで熟成を行う場合、保管スペースが必要になる
    • 新しいオーク樽は非常に高価(古い樽はオーク樽由来の香りをほとんど与えることがない。オークチップは安価だがコストは増加する。)
  7. パッケージング
    • ボトル、クロージャー、ラベル、カートン(ボール箱)、パレット(木箱)などの資材が必要。(変わった形のボトル・ラベルはコスト増になる)
    • ボトリングラインの設備、または他のワイナリー設備の利用料
    • ラベルのデザイン料
  8. 減価償却費
    • ワイナリーで使用する設備・機械の減価償却費

3. 輸送

ワインを輸送するための手段は大きく2つ。

輸送方法特徴輸送コンテナでの積載量
瓶詰めされたワインの輸送・一般的な輸送方法で、ワインの輸送を専門とする会社を利用することが多い。
・価格は高くなるが、温度管理された輸送コンテナなど、ワインの品質を保った輸送が可能になるため。
9,000〜10,000L
バルク輸送・ワインをタンクや樽で輸送する方法で、安価で環境に優しい輸送方法。
・大幅輸送に向いていて、輸送量が増加傾向にある。
同じワインを15,000ケース以上販売する場合はコストメリットがある。
・2019年時点では世界のワインの34%を占めるが、金額ベースでは8%に過ぎない。
25,000L
ワインの輸送方法

1. ボトルワインの輸送

輸送方法は4つあり、ルートにとって使い分けを行う。

輸送方法特徴用途
航空輸送コストが非常に高い(ワインは大きさや価値に対して、非常に重いため)・コンクールに送る場合
・非常に高いワインを送る場合
・期限が重要な場合(日本のBeaujolais Nouveau市場)
道路ほとんどの場合、最初と最後は道路輸送になる。配送先まで直接運ぶことができ、短距離輸送に向いている。・短距離輸送
・海峡輸送など、トラックが直接フェリーに乗り降りできる場合は効率が良い
鉄道コンテナ化することで輸送コストが安くなる場合がある。(パレットの載せ替えはコスト高になる)・大陸間の大量輸送
海路長距離輸送をする場合に、最も一般的で安価な輸送方法。欠点は輸送に時間がかかること。・大陸を跨ぐ長距離輸送
ボトルワインの輸送方法

2. バルク輸送

  • バルクワインの輸送方法
    1. (一般的)標準的な輸送コンテナ内にプラスチック製のふレキシタンクを設置(最大24,000L)
    2. ISOタンクを設置(最大26,000L)
  • バルクワインの輸送量
    • 2001年:23% → 2010年:43% → 2019年:34%
    • スペイン、アメリカ、南アフリカ、オーストラリア、チリは輸出量の40%以上を占める(スペインは55%)

4. 輸入

他国でワインを販売する場合、一般的に関税と販売代理店へのマージンが発生する。販売代理店を使わない選択肢もあるが、その場合輸出先の国の法律を把握し、ラベル表記などの対応を行う必要があるため、多くの生産者は販売代理店を利用している。

  • 輸入関税
  • 販売代理店のマージン
    • 各国の法律への対応
      • アルコール度数の表示(アメリカは1.5%の誤差が許されているが、EUは最も近い度数を表示する必要がある)
      • 健康に関する警告の表示(アメリカでは表示義務があるが、EUにはない)

5. 販売

  • 物件費
    • 小売店・接客業ともに、営業するための建物が必要であり、一般的に高額になる傾向
    • オンラインのみの小売業者は、倉庫スペースが安価になるためコストを抑えることができる
  • 人件費
    • 必要となるスタッフのスキルや専門性は、業態によって大きく異なる
      • スーパーマーケット:専門性の高いスタッフは必要ない
      • ワイン専門店:ワインの知識を持ち、お客様にアドバイスができる必要がある
      • レストラン:特に高級レストランでは、ワインに関する高度な知識を保有し、リストに載せるワインの選定、お客様に詳細なアドバイスをする能力も必要とされる
  • 設備と資材
    • 小売店:会計システム、冷蔵庫、陳列棚、清掃用具など
    • 接客業:上記に加え、調理設備、食器・グラス、高価なワイン保存システムなど
  • ストレージコスト(ワインの保管場所)
  • 配送料
  • 販売時点でのマージン
    • 小売店:30〜50%
    • 接客業:50〜67%(グラスワインはリスクがあるため、さらに高くなる)

6. マーケティング

詳細は D2-6. マーケティング を参照

  • 労働力
    • 大規模の生産者:自社内のマーケティングチーム
    • 中小規模の生産者:外部のマーケティング会社、または業界団体
  • ボトルやラベルのデザインと制作
  • マーケティング・キャンペーン

7. 為替の変動

為替変動がワインの価格に与える影響は大きく、軽減するためにはいくつかの方法がある。

為替リスクの軽減方法取引方法特徴
オプション事前に購入するワインの価格と量を取り決め、合意した時期に輸入業者が購入するかどうかを判断する・生産者は売れ残りのリスクを抱える一方で、高い価格を設定できる可能性がある
・輸入業者は判断を先延ばしにできる
注文時に輸入業者の通貨で価格で固定価格を輸入業者の通貨で設定する(通常は生産者の通貨で固定する)・生産者が為替リスクを抱える(販売時まで価格が分からない)
・輸入業者は生産者から割増料金を請求される可能性がある
為替ヘッジ特定の注文に対応できるように、あらかじめ通貨を購入・保有しておく・輸入業者には通貨を管理するスキルが求められる(そのため、一般的に大企業に限られる)
USドル・ユーロでの取引不安定な自国通貨ではなく、安定したUSドル・ユーロで取引を行う生産者・輸入業者、両者にとって魅力的な方法(為替が安定し、通貨交換の回数が減る)
現地口座・現地通貨での取引取引を行う通貨を保有し、直接取引を行う多額の資金を外貨で保有していることで、資金の有効活用ができない可能性がある
為替リスクの軽減方法

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