D2 – 5. 最終消費者へのリーチ

生産者の直接販売以外で最終消費者へリーチする方法には、大きく小売店と接客業がある。

多くの市場では小売店の販売量がはるかに多く、イギリスでは約80%を占めている。

1. 小売店

1. Supermarkets

多くの市場において、Supermarketsがワイン販売において最大のシェアを占めている。そのため、大量のワインを販売したい生産者にとって、非常に魅力的な選択肢である。

メリット・大量のワインを販売することができる
・Private Label Wine(Supermarketsの独自ブランド)で販売することができ、顧客ロイヤリティが高まることがある
・品質管理やワインのスタイルなどの専門知識が、他のルートの販売に役立つ可能性がある
・職人気質の生産者にとって、販路拡大のきっかけになる可能性がある
デメリット・Supermarketsの価格交渉の強さによって、売価が低下する
・追加のプロモーション費用が発生する
・品質管理、配送、ラベルに関する厳しい要件を満たす必要がある
・期待売上を達成できない場合に契約が継続できないリスクがある(膨大な在庫を抱え込むリスクがある)
Supermarketsのメリット・デメリット

2. Deep Discounters

Deep Discountersは、スーパーマーケットと同様の機能を持ちながら、より低価格で販売する小売店のこと。恒久的に低価格で販売するため、期間限定のプロモーションを行うことはほとんどない点が特徴。

  • 薄利多売で利益を得る
  • ほとんどの商品がプライベート・ブランド
  • マーケティングコストを含め、間接費の少ないマイナーな生産者との取引を好む傾向がある(製造原価と品質を重視する)
メリット・生産者から直接購入することが多いため、中間コストを省くことができる
・プロモーションコストが発生しないため、Supermarketsより利益を確保できる可能性がある
・余剰ワインを売り切ることができる
・販売シェアが拡大している(イギリスでは、ワイン愛飲家の購入者シェアが2012年の23%から、2018年は37%まで増加している)
デメリット・継続的に取引を行えるかが分からない
Deep Discountersのメリット・デメリット

3. Convenience Retailers

いつでもどこでも営業していて、より人々の生活に密着していてため重要性が増している小売店。

メリット・販売機会が多い
 ・営業時間が長い
 ・生活圏に近い
・大手チェーンでは、地元の消費者に人気のある銘柄を扱い、独自ブランドを保有している場合もある
デメリット・店舗運営のコストが高く、販売価格が高くなる傾向がある
Convenience Retailersのメリット・デメリット

4. Specialist Wine Retailers

ワインを専門に扱う小売店で、特定の国のワインや食品を専門的に扱う店もある。大きなチェーン店もあるが、ほとんどは個人経営もしくは小さなチェーン店である。

メリット・消費者の1本あたり購入金額が高い(プレミアムワインの販売機会がある)
・価格が高いため、高い利益率が期待できる
デメリット・1店舗あたりの販売数量が少ないため、一般的に代理店に販売を委託するケースが多く、コストが高くなる
・消費者へのサービスにコストがかかる(専門性の高いスタッフを雇用し、高品質な顧客サービスが必要となる)
Specialist Wine Retailersのメリット・デメリット

顧客サービスには、次のようなものがある。

  • お客様にワインのストーリーを伝える
  • あまり知られていない産地や品種の情報を提供する
  • 料理との組み合わせを提案する
  • 常連客との関係を築き、顧客の好き嫌いを把握した上で新しいワインの提案を行う
  • お気に入りのワインの販売時期を知らせる
  • 試飲会やワイン教室などのイベントを開催する

5. Hybrids

Barの併設や料理の提供などを行い、ワインを飲むことができるエリアを設けている小売店。

メリット試飲してもらえることで、ワインの知識の少ない消費者にワインを購入してもらうことができる
・より広い消費者にアプローチできる
・マイナー産地、品種の紹介ができる
デメリット・営業時間が長くなる(遅い時間までの営業が必要)
・接客スタッフの増員が必要
・設備の追加が必要
・関連する役所、手続きが増える
Specialist Wine Retailersのメリット・デメリット

6. Online Retailing

多くの国でオンライン小売が大幅に増加傾向にある。ただし、その重要性は国によって異なり、中国では20%の売上を占めるがアメリカでは2%に留まる。

メリット・(オンライン販売のみの場合は)コストの高い小売店を持つ必要がなく、郊外の倉庫で運営を行うことができる
・コストを抑えることができるため、より多くの商品を扱うことができる
・実店舗より、大きな顧客基盤を保有できる
デメリット・ワインは重くてかさばるため、配送料が高くなる傾向にある
・ワインを輸送する際の、紛失・破損リスクがある
・消費者が望む短納期への対応が求められる
Online Retailingのメリット・デメリット

また、信頼性が高くブランドイメージが伝わるWebサイトの構築が必要である。

  • 使いやすいサイト作り
  • ワインの詳細な説明
    • 料理とワインの組み合わせの提案
    • スタッフやワイン評論家のコメント
    • ワインコンクールでのメダル獲得情報
  • コンテンツを最新の情報に保つ(新しいワインの入荷、在庫の最新情報)

7. Global Travel Retails

空港などに設置されている、旅行者向けの小売店。

メリット・消費者(旅行者)がゆっくり商品を見る時間がある
・自国では手に入らない、高価格な商品を求める傾向がある(プレミアムワインの販売機会がある)
デメリット・自由貿易協定により、免税の重要性が低下している
・小売スペースのコストが高いため、利益率が低くなる
Global Travel Retailsのメリット・デメリット

8. Wine Investment Companies

投資用のワインを専門に調達・販売している企業。

希少価値によって非常に高い価格で取引されるワインを、生産者または業者を介して購入し、お客様への販売を行う。実質、ブローカーの役割を果たしている企業もある。

  • ロンドン:伝統的にワイン投資の中心地であり、多くの有力企業がロンドンに拠点を置いている
  • 中国:2008年に香港政府は「東アジアのワイン取引の拠点」になることを目指し、ワインの物品税を廃止し投資が激化している

2. 接客業

接客業で販売されるワインの平均価格は、小売よりも高いことが多い。ワインの販売量が20%であるのに対し、販売額では40%近くに達している。

1. Bars

ワインの観点からは、ワインに特化したバーと一般的なバーに分類できる。

Specialist Wine Bars・ワイン専門の小売店と類似している
・ターゲットはワインへの熱中度が高い消費者
・特定の国やワインのスタイルにフォーカスしている店も多い
・価格競争力が弱いため、有名ブランドのワインを提供することはなく、小規模な生産者のワインを扱う傾向がある
General Bars・ワインは提供される飲み物の1つに過ぎない
・通常は大手企業が生産した、有名な産地や品種のワインを扱う
・安価または中価格帯のワインで、幅広い層に受け入れられるワインが中心
Barsの種類と特徴

2. Restaurants

食事そのものが目的がどうかによって分類することができ、その重要度によって扱うワインの品質も異なる。

Non-Destination Restaurants・食事を主目的にしていないレストラン(劇場や映画の合間、仕事終わりの食事など)で、多くはチェーン店
・General Bars同様に、有名な産地やブドウ品種で安価から中価格帯のワインが中心
Casual Dining・カジュアルな食事から長時間の利用まで、幅広いシーンで利用されるレストランで、個人経営や小規模なチェーン点が多い
・中価格帯からプレミアム価格帯のワインが中心
・よく知られた産地や品種のワインに加え、あまり知られていないワインを混在していることが多い
・スタッフはお客様の好みや価格、料理との組み合わせからワインのアドバイスができるように訓練されている
Fine Dining・食事が目的地であり、レストランでの食事と体験が訪問の理由となる
・料理とワインのペアリングが非常に重要であり、限られた量しか入手できないスーパープレミアムなワインを扱う
・ワインリストに掲載されることは、生産者にとって大きな誇りである
・ワインの入手は困難であるため、一般的には仲介業者を通して購入する
Restaurantsの種類と特徴

3. 特殊な市場環境

国によっては、アルコール販売の規制が厳しい国があり、そのような国では特殊な市場が形成されている。

代表的な市場は、国よる独占市場とアメリカの3層システムである。

1. Monopoly Markets:独占市場

北欧諸国やカナダでは、アルコール飲料の小売販売を政府が独占している。

  • スウェーデンでは、政府が所有するチェーン店「Systembolaget」が唯一アルコールを販売できる小売店
  • カナダのオンタリオ州では、LCBO(Liquor Control Board of Ontario:オンタリオ州酒類統制委員会)が完全に管理

独占販売の目的は、アルコールの消費を制限することで、そのために次のようなシステムと影響力がある。

  • アルコール飲料に高額の税金が課せられており、非常に高価である
  • 宣伝や値下げをするインセンティブが働かない
  • ワインの仕入れは官僚主義のシステムであるため、非常に煩雑である一方、最終的に品質のみで判断されるため、生産者の規模によらず採用される可能性がある

2. The USA’s Three-Tier System:アメリカの3層システム

アメリカでは、アルコール飲料の流通・販売は州ごとに厳格で複雑な法律が制定されている。そのため、アメリカでアルコールのビジネスを行うことは容易ではない。

業者は3つの層に分類されており、小売業と他の階層のクロス・オーナーシップが制限または完全に禁止されている。

  1. Suppliers:生産者、輸入者を含む
  2. Distributors:卸売業者、ブローカーを含む
  3. Retailer:小売店、HoReCaを含む

この法律は1933年の禁酒法廃止の名残で、禁酒法以前の時代に逆戻りすることを回避するために設けられている。(サルーンと呼ばれる賭博、売春、犯罪、酩酊)

このため、原則として生産者が卸売業者を経由せずに、消費者に直接販売することはできない。ただし、消費者への直接販売を認める州が増えている。

州による規制の厳しさによって、3つに分類される。

  • 州がアルコール販売に直接関与する
    1. Control州
      • 3層のうち、1つ以上を州が独占している
      • 17の州がある
  • 州が直接関与しない
    1. Open州
      • 規制への関与が少ない
    2. Franchise州
      • フランチャイズ法によって、Distributorsの変更が厳しく制限されている
      • Distributorsの任命はほとんど「終身雇用」で、現実的に変更はできない(SuppliersによるDistributorsの突然の変更は、壊滅的な打撃につながるため)

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